日本の住宅建築を語る時、今や「輸入材」を抜きに語ることはできません。
木材の輸入は昭和初期から始まりました。
第二次大戦後の復興期や昭和40年代のオイルショックを経て、輸入材はそのシェアを伸ばし続けました。
現在、年間約100万戸の住宅に用いられる木材の7割強が海外からの輸入材です。
日本は国土の7割を森林が占める有数の「森林国」です。 住宅を建築する時は、その土地で育った木材をなるべく多く、輸入材は補助的に使うことが本来の姿です。 ではなぜ、国産材の代替品である輸入材がそんなに多く普及したのでしょうか? 諸説あげられますが、比較的安定供給が可能なこと、国産材では手に入れることができなくなった大径木があることなどが大きな理由です。 そして輸出国側との貿易上の問題や、我が国の国際的な立場を考慮するとあるていどの輸入材受け入れはやむを得ないことかもしれません。 しかし、過去を振り返ってみると、東南アジアなどの輸出国では無計画な伐採により、森林破壊という取り返しのつかない事態を招いてしまいました。 また、あまりにも輸入材を多用しすぎて良質な原木が少なくなってきてしまいました。 今日ではその過ちを反省し、ほとんどが植林と伐採を繰り返す計画伐採を行うようになりました。 戦後約50年経った現在、国内各地で植林され成木となったスギやヒノキが伐採時期を迎えようとしています。 21世紀を迎えた我々は今、「輸入材」が果たす本来の役割について改めて考え直す必要があるのかもしれません。
木材流通の過程で、欠かすことのできない位置にあるのが木材製品市場です。 その最大のメリットは、北は北海道から南は九州鹿児島まで、日本各地のスギやヒノキなどの国産材製品が集まるだけにとどまらず、 遠く海外からはロシアからアカマツ、北米大陸からはベイマツやベイツガなどの輸入材が集まることです。 運び込まれた木材製品は、市場会社や所属の問屋さんが買い取る場合もありますが、その大部分は市場価格形成の基本である「セリにかけて売る」という委託販売形式を取ります。 市場会社は、この時の売上高に応じて手数料として収入を得ます。 買い手である各地の小売業者は、その集められた各産地の多種多様な製品を、樹齢や木のもつ性質、状態など”プロの目” で「実際に見て」、予算などを考慮し「希望にあったものを選ぶ」ことができます。 「木材の価格はわかりにくい」という声をよく耳にします。 木材は々樹種や寸法でも、樹齢や乾燥度合いの違いによって価値が異なりますが、 このセリによる売買のために相場の変動が早く「価格が常に流動的」であることも原因のひとつといえます。 このように、全国各地の産地製材所から製品が集まる木材製品市場は、 流通の過程で重要な役割を果たし、その市場を利用することは、製品価格の点からみても多くの場合割安になります。
木材小売店は、製品市場や問屋さんから仕入れた木材や住宅機器を、お客さんである建て主さんや大工さんに小口販売することを基本的な仕事とします。 住宅に使われる木材の適材適所を熟知し、木材を乾燥させるストックヤードとしての役割を十分に果たして、木材を扱うプロとして性格で適切なアドバイスができなければなりません。 現実には「予算」という大きな壁が立ちはだかりますが、可能な限り依頼主の希望に添うよう、かつ、安全で丈夫な住宅になるように木材を提供する努力をしています。 小売店とはその名のとおり「工務店などへの卸売業者」ではありません。 皆さんが日曜大工に使う木材も、一本、一枚からでも販売しますし配達もします。 また、簡単な図面からでもどんな材料が必要かアドバイスもしています。 そしてなにより、皆さんの家に使うかもしれない木材を直接見て、触って、確かめることができる「ショールーム」であるのです。 「木材の流通」という本来の仕事以外で、小売店が持つもう一つの隠れた大きな利点は、「数多くの建築現場に直接携わっている」ということです。 「この大工さんはここにこの木を使うのか」「この図面を書いた設計士さんはなぜこうしたのだろう?」など、一件の住宅を造る過程で様々な業者の仕事ぶりを直接見ています。 大工さんはもちろん、電気屋さんや左官屋さんなど、職人さんたちの仕事上の癖や人柄までも、毎日の仕事の上で目にしたり耳にしています。 このように木材小売店は「建築現場の情報バンク」的存在であり、住宅を建てようとしている方にとって各地域の小売店を上手に活用することは、 希望にあった納得のいく住まい造りの第一歩になります。
|