鉄骨を本音で話す会

平成14年10月25日 茨城県建設技術研修センター

参加者名簿(pdfファイル)

 建築鉄骨に関わる人々が集まって、本音をポロリと話合える場を作りたいとの発案から企画しました。建築基準法が改正され、旧告示1103号の廃止、新たな告示1464号への対応、中間検査、入熱量パス間温度の管理等々取り巻く環境が随分とめまぐるしく変化をしているなか、建築業界の長引く不況の中で工期の無い工事ばかりで、設計者、鉄骨加工者そして施工者がお互いの仕事内容を理解しようという機会がもてないのが現状です。同じ目的を持つ者がそれぞれの知恵を絞って無駄を省き、創造的な意欲のわく仕事にする努力をしたい。日頃思っている疑問・要望等を各分野の人々にぶつけて反応を確かめてみたいとの思いをJSCA茨城さんにお話したところ、快く了解を得て実現しました。心より感謝です。

*JSCAとは日本建築構造技術者協会(JapanStructuralConsultantsAssociation)です。
詳しくは協会ホームページ>をご覧下さい。



参加していただいた方のご感想

「鉄骨を本音で話す会」に参加して


構研設計  転石 勇

「建築鉄骨の設計者と製作者が同じ目線で本音を言い合いましょう」との主旨で行われた標記勉強会は、参加者の数が構造設計関係者30名、鉄工所23名と多いこともさることながら、発言者が多く、熱を帯びた議論が展開されたことは特筆すべきことと思います。
例えば、我々が常々図面化する「柱−梁仕口部分」一つにしても、それを製品として完成するための溶接作業の準備段階である仮付け加工時だけで「裏ハツリ法か裏当金溶接か、溶接面の開先角度・ルートギャップ、エンドタブの選定、改良スカーラップかノンスカーラップか」といった諸々の作業要素を決定しなければなりません。
私は、<u>鉄骨の構造設計とは作業条件を全て決定して加工者に製作の方向を指示し、鉄骨加工工場での製作過程状況を構造設計者の目で確認するまでが最小限の仕事範囲</u>と考えています。
良い製品造りのために、より多くの関係者に接し意見交換する必要性はなにも鉄骨に限ったことではありませんが・・・
加工者側は、各々多少であっても異なった考えを持っているもので、検査等で訪問する各鉄工所で、物造りに関して色々な見識を伺う事が私にとって非常に楽しいことですし、製作の現場に出向くことは自分の研鑚にもつながると感じています。
鉄骨加工者から「どう取り付くのか」または「納まらない」等の声を良く耳にします。当たり前の事ですが、構造設計はディテールの裏付けが基本にあって「耐えられるだけでなく、造れること」をまず第一に考えて提案すべきものと思っています。
勉強会では、構造設計者相互にも様々な考えの違いが見られ、「本音の発言」は設計業界の問題点も鮮明になりました。構造設計者が鉄骨加工者と接触出来ず、意匠担当者が諸々の打ち合わせをこなさねばならない現実や、構造者の知識不足による困難等、今後JSCAとして提案すべきことが多々感じられます。立場は違っても、良い建物を造るという目的は同じです。設計者・加工者が同じ目線で話し合うことがいかに重要なことか、参加者全員が感じたことでしょう。
それにしても、鉄工所の知識の豊富さや勉強熱心さには感動しました。加工者にとって知識不足は致命的な損失になりかねませんから、それなりの学習は当然のことだとは簡単には言えない規則の細かさ、我々構造設計者は加工者から学ぶものがたくさんあると感じた3時間でした。次回の勉強会はもっと白熱した議論が展開されそうな予感がします。

桜井鉄工茨城工場

沢田石正秀


 先日の「本音で話す会」は構造設計者と自由に話し合えた貴重な体験でした。設計者と製作者が密に接触することは当たり前のことですが、なぜ今まで構造設計者といろいろな話が出来なかったのだろうかと不思議な気がします。その中で二点ほど感想を述べたいと思います。
 @設計図書に示された製品を製作するのが我々の仕事ですが、構造設計者の製作主旨を理解することは製作上重要な要素です。設計図面にて基本的な事項は把握出来ますが、設計者がどのように造れと言っているのかは伝わって来ません。「もの造り」とは指示者の求めるところをしっかり理解して造らなければ出来上がりに微妙な違いが生じます。しかしながら、現実には構造設計者と直接打ち合わせできる建物は稀です。なぜ構造設計者は鉄工所に来ないのかという疑間を以前から持っていました。今回それについての議論の中で、構造設計者が現場(鉄工所)に来るのは容易ではないという諸々の事情も初めて解りました。又、設計者サイドの活発な意見交換により、製作のプロセスが非常に重要と考えているのは設計者・鉄工所共一致しているとも理解しました。今後は構造設計者と直接打ち合わせが出来るような方法を共同で探るべきと強く感じました。>
 A性能評価による新しい工場グレードは設計者によく理解されていないように思います。
評価の主旨は、どのような製作工場においても同じ品質の製品が作れることを前提にしています。つまり、旧認定にあった工場の規模や生産量の規定ではなく、設計図書の理解カ・製品の製作能力に力点が置かれています。溶接作業もグレードによる規定内では同じように管理された製品を製造出来る能力を有しているとの評価によります。したがって、各グレード工場では規定内であれば同じ品質の製品を製作できるのです。 設計図書による製作工場グレード指定が、その理由をやや曖昧のまま表記されているならばその責任は我々に在ります。設計事務所サイドにもっと性能評価による工場グレードの内容を理解してもらう努力が必要です。

 今回50余人の技術者の交流が、回を重ねて将来大きな意義を持つことを希望して止みません。