エンドタブ施工技能講習会

1.趣旨  いまさら聞けない"業界の不思議"に切り込むのが本音の会!

 エンドタブは、元来は溶接始終端部に生じやすい溶接欠陥を逃がすために溶接線の始終端部に取り付ける補助板で、母材と同材質ないし同等溶接性能の鋼材のものと、固形の耐火物(セラミック、フラックス等)とがあります。 前者を鋼製タブ、後者を固形タブと呼称します。開先溶接継手の端面側が自由端として残される際には鋼製タブが使用されています。鋼製タブは、開先溶接の始終端に発生する溶接欠陥をエンドタブの開先・溶着金属内に残存させ、溶接後エンドタブを切り落とす施工法によって本体の溶接品質を確保しますが、タブ取付の本体へのタック溶接がショートビードとなり母材硬化が生じることや、タブの切り落としの際にガス切断によるノッチが発生するためにエンドタブ切断後グラインダー等で平滑に仕上げなければならずコストが余計に掛かります。

 一方固形タブは、針金やマグネットで押さえるだけでごく簡単に取り付けられ、溶接後の後処理作業が不要等の利点があります。ただし鋼製タブ工法とは異なる溶接技量が必要で、端部に欠陥を生じさせやすいと言う難点がございます。ゆえに鋼製タブ以外(代替タブ)を採用する際に、JASS6(日本建築学会基準)では工事監理者の事前の承認を規定しています。しかしながらコストダウンを最優先される中でファブからの「代替タブ」使用願いに対し多くの設計監理者が疑問を残しながらも承認をしなければならない現実があるようです。

2.第1回監理講習会 平成24年11月30日

 そこで、昨年11月30日に(財)茨城県建築センターの公益事業の補助を頂き、行政建築担当官、設計・監理者と鉄骨制作工場とで、溶接技術技能におけるエンドタブ施工管理の共通知識を、それぞれの立場の技術者が横断的に共有し的確なエンドタブ施工の承認・運用を図りもって県内鋼構造物の品質確保の一助とするべく、NPO法人日本エンドタブ協会から講師を招き講習会を開催いたしした。

 実に100人を超す参加者がございました。問題意識の高さに敬服。

  

整理致しますと、

 鋼製タブを使い、溶接で難しいとされる、アークスタートとクレーターを切り捨てる両端の鋼製タブ上で処理すれば、汎用的に溶接の健全性が保ちやすい。一方固形タブは切落してします原材料並び作業のロスを省くと共に、入熱量の低減による母材の健全性にも優れるが、その利点を活用するには、溶接技術に関する知識と技能が必要であるとの共通認識は持つことができました。

では、実際の製作現場ではその技能をどのように確認担保してゆくかという問いが残りました。

3.第1回エンドタブ技能講習 

平成25年10月26日  鐵構技術センター(龍ヶ崎市大徳町)

固形タブを使用して健全な溶接を行うための、学科講習並び達人による実演を受けて、実技を行い、日本建築構造技術者協会(JSCA)茨城と日本エンドタブ協会がUTとVT検査により技量判定を行い以下の表の技能者が資格を取得した。 

 JSCA茨城斉藤代表  日本エンドタブ協会松崎理事長   実技講習          実技試験

斉藤代表

26名(35種目)の参加があり、判定結果は以下の通り

受験
番号
氏名 社名 評価
下向き
評価
横向き
1 白土 玲司 大三工業㈲ A  
2 長山 潤二 大三工業㈲ A  
3 藤枝   功 第一藤江鉄工建設㈱ A A
4 沼田 信行 第一藤江鉄工建設㈱ B SA
5 中里 真純 ㈱中里鋼業 SA A
6 安達 一男 ㈲安達工業所 A  
7 大坂部和之 ㈲安達工業所 A  
8 関澤 光巨 ㈲成田鉄工所 A  
9 後藤   充 柳田工業㈱ A  
10 倉茂 広昭 須永工業㈲ A A
11 豊﨑   悟 ㈱東和鉄工 A  
12 笹森搖野 ㈱石山建設工業 A  
13 鈴木 知幸 ㈱石山建設工業 A  
14 西   藤彦 ㈱石山建設工業 A  
15 大川   薫 ㈱増山鐵工 B A
16 宇田川信一 ㈱増山鐵工 A A
17 宇田野悟史 ㈱増山鐵工   A
18   隆志 つくし工業㈱ SA  
19 ペンポンデン つくし工業㈱ SA  
20 佐々木一男 入江金属工業㈱ SA  
21 吉村 一徳 入江金属工業㈱ B  
23 藤本   豊 ㈱加藤建設 A  
24 大川健一郎 ㈱大川鐵工所 B  
26 額川 将司 ㈲小沼鉄工所 A A

 資 格 証 (見本:最優秀技能者の写しです)

下向き チャンピオン   A面                 B面                                

   

横向き チャンピオン   A面                 B面

   

 

JSCA茨城代表幹事 

 斎藤 章 様 のコメント 

 梁端部に溶接熱の逃げ道がない固形えタブ工法は、特にアークのスタートにて欠陥が生じる危険性が高く、通常の溶接とは違った技量が要求されます。

鉄骨建築の90%を占める中小建物において、柱・梁仕口部分の溶接に固形タブの使用が主流になっているにもかかわらず、施工者・監理者にその認識が薄いと云わざるを得ません。

 そのような現状を憂いて、茨城県鐵構工業協同組合が自主的に立ち上げた本講習会に敬意を表します。全国に先駆けての講習は、茨城の技術者の「気概」を示すものと感じています。

 今後、このような講習が全国的に広がることを期待して止みません。