動物実験でわかったみそのがん予防効果
〜みその肝臓がん抑制作用を解明〜

発がんのメカニズムに食品が大きく関与していることは、多くの研究によって示され
てきました。みそのがん抑制効果については、1981年、平山雄博士(当時
国立がんセンター研究所の疫学部長)によって胃がんの発生抑制効果が明らかに
されましたが、実験腫瘍に対する、みその腫瘍抑制作用についての研究は
これまでのところなされていませんでした。
いつの間にか「塩=高血圧」という図式が定着していますが、最近の研究によると、
一律的な「減塩」が疑問視され始めています。それは食塩感受性の研究から
明らかになってきたものです。



++広島大学 原爆放射能医学研究所・癌部門教授 伊藤明弘先生のお話++

1. 放射線で誘発される肝臓がんが、みそで減少。
 放射線(中性子線)で誘発される肝臓がんに対し、みそが抑制効果を持つかどうかを調べることを目的に、
マウスを使って実験を行った結果、みその成分中には肝臓がんの発現を抑制する何らかの作用があることがわ
かりました。

 実験はマウスを4つのグループに分け、おのおの以下の処置を施しました。

  グループ1:普通の餌で飼育
  グループ2:みそ餌で飼育
  グループ3:普通の餌で飼育後、放射線を照射
  グループ4:みそ餌で飼育後、放射線を照射

 この結果、グループ3のマウスがもっとも肝臓がんの発現率が高く、ついで、グループ4、グループ1、
グループ2という順番の結果がでました。普通の餌で飼育したグループより、味噌で飼育したグループの方
が十分低い発現率を示したのです。



2. 自然に発生する肝臓がんについても、みそが効果的
 自然に(遺伝的に)肝臓がんを発生しやすいマウスを3つのグループに分け、みそ餌、しょうゆ餌、普通
の餌で育てたところ、みそ餌グループとしょうゆ餌グループのマウスは普通餌グループのマウスよりも十分
に腫瘍が少ないことがわかりました。このことから、みそを常食することで、肝臓がんの発生を抑制するこ
とがわかったのです。



3. みその成分が、放射能のヨウ素とセシウムを排泄
 さらに、別の実験で興味深い事実が確かめられました。チェルノブイリの原発事故で全世界を汚染したの
と同じ、アイソトープ(放射性同位元素)のヨウ素131とセシウム134をマウスに投与し、体内からの排泄
実験を行ったものです。
 その結果、あらかじめみそ餌を与えておいたマウスでは、通常の餌を食べているマウスに比べ、ヨウ素の
排泄が多く見られました。また、セシウムについても、みそ投与群の方が、筋肉内のアイソトープ量が減少
していました。放射線照射の結果と同様、別の角度からもみその放射線防御作用が確かめられたわけです。



4. みその生理効果は、発酵食品によるところが大きい
 さて、みその成分がどのように働いて、放射線防御作用を起こすのか、ということですが、これははっき
りは判明していませんが、実験の結果からいくつかのことを窺い知ることができます。
 1つはみその成分により、体の代謝活性が良くなるということ。またひとつはみその成分中には、血液中
の放射性物質などと物理結合する物質があり、それが、放射性物質を排泄するのだろうということです。
 こうしたみその生理作用は、主としてみその成分中でも大豆成分にあると思われますが、単に大豆成分だ
けでなく、みそが発酵食品であることも大きく関係していると思われます。それは同じく大豆を主原料とし、
麹菌で発酵させて作るしょうゆにも同様の効果が認められたからです。発酵の際に造られる酵素は、強い解
毒作用を持ちますから、これらもみそやしょうゆの放射性物質除去作用の要因になっていると考えられるの
です。
 また別の研究によると、みその成分には免疫細胞を賦活(活性化)させる非常に強い力がある、というこ
とが報告されています。こうしたいくつもの要素が絡み合って、みその生理効果が生まれてくるのだと考え
てよいでしょう。







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